造船アスベスト国賠訴訟~原告・被害者の声~ - 大阪アスベスト弁護団

造船アスベスト国賠訴訟~原告・被害者の声~

2023.02.14

 造船作業に従事してアスベスト関連疾患にかかった被災者と遺族が、2023年2月10日に、国の責任を追及する訴訟を提起しました。この訴訟は、造船作業に従事したアスベスト被害者が国の責任を問う初めての訴訟です。当弁護団は、大阪地裁の訴訟(被災者7名)を担当しています(同じ日に札幌地裁でも被災者1名について提訴されています)。

 

 大阪訴訟で原告になったのは、近畿または四国在住の方です。被災者は、大手造船会社(三井造船、川崎重工業、日立造船、ビューローベリタスジャパン等)の元従業員や、下請企業の元従業員、または一人親方として、電気工、木工(大工・内装)、配管工、保温工、マリンサーベイヤー(船舶検査員)をしていた方々です。

 

 造船の作業内容は、建設現場のものと一緒でした。しかし厚生労働省は、国からの給付金(建設アスベスト給付金制度)に関し、造船作業をしていた被災者については、「建設アスベスト最高裁判決は造船作業者に関する事案とは異なるものと認識している」などとして、給付対象から除外しています。

 

 造船作業者の労災認定者は、2007(平成19)年~2001(令和3)年までで1886人で、建設業(8089人)に次いで多く、建物建造数と船舶建造数や作業従事者の人数の比較からしても、とても多くの方々に被害が発生していることは明らかです。

 

 私たちは、この訴訟を通じて、建設現場の作業と同じであるにもかかわらず、国が造船作業の被災者を給付金の対象外としていることを改めさせ、被害補償させることを目指しています。

 

【大阪訴訟で原告となった方々(または家族)の声】

・大阪市在住・原告家族女性

 父は少しの体調不良では病院には行かない人で仕事も休む事なく物静かな人でした。そんな父は、母と2人暮らしで遠方にいる孫達と旅行に行きたいと、2年前の宣告まで頑張って仕事をしていました。職場の健康診断で、中皮腫が見つかり、余命1年治療の施しようがないと宣告されました。父は孫達との旅行を夢見ていたので、少しでも回復の可能性があるかもしれないと、中皮腫の肺の痛みに苦しみ、抗がん剤治療の苦しみに耐えながら中皮腫と戦ってくれています。突然の宣告から2年間、私達家族は父の回復をひたすら信じながら、入退院を繰り返す父を頑張って笑顔でサポートしてきました。家族に心配かけまいとする我慢強い父も日に日に痛みが増してきて苦しんでいます。このとても辛く長い戦いを少しでもやわらげられるように、国の誠意あるご対応をお願いしたいと望むだけです。

 

・神戸市在住・男性

 アスベストの病気で苦しむことになるなど思わず、ただ一生懸命働いてきました。

国はきちんと責任を取って欲しいと思います。

 

・京都府在住・遺族女性

 夫は中皮腫という辛く苦しく壮絶な病と闘った末、命を落としました。家族はアスベストの恐ろしさを痛感しました。他にも犠牲になられた人は多くいらっしゃると思います。国がアスベストの使用の危険性を広く知らせてくれていたら夫はそんな危険な仕事はしていませんでした。国が造船業の被害者には責任を認めないと聞き、愕然としました。私たち被害者家族は、国の責任を明らかにするため、裁判に立ち上がることにしました。

 

・高知市在住・遺族男性

 アスベストによる中皮腫で亡くなった、父の最期はとてもつらいものでした。退職したら、母と二人で大好きな釣りをして過ごしたいという願いも叶わず、父を亡くした後の母も、長い間悲しい思いを抱えていました。国がアスベストの危険性について、早くに対応してくれていれば、父もつらく悲しい思いをしないで済んだと思います。アスベスト被害者に対して、国の誠意ある対応を望みます。

 

・神戸市在住・遺族女性

 夫は、70歳になってすぐに、アスベストによる肺がんで苦しみながら亡くなりました。子どもも独立して、夫婦二人で旅行をする等して過ごそうと思っていた矢先に肺がんが見つかり、それもかなわなくなりました。本人も、「もっと生きたい」と言っていました。国がアスベストについて適切に対応してくれてさえいれば、今も夫は生きていたはずで、私たち家族はこんなことにはなりませんでした。国には、謝罪と、誠意ある対応を望みます。

 

 

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