体育館に石綿吹付材、北九州市の所有者責任認める福岡地裁判決
2020.09.232020年9月16日(水)、福岡地方裁判所(徳地淳裁判長)は、北九州市立体育館の設備の管理業務に従事し、石綿による肺がんで亡くなった被害者について、体育館の所有者である北九州市の営造物責任と、勤務先会社である設備管理会社・太平ビルサービス㈱の安全配慮義務違反を認め、約2580万円の支払いを命じました。国家賠償法2条1項により建物所有者である自治体を含む公共団体の管理責任を認めた判決は初めてで、画期的です。
被害者は、1990年から2005年まで15年間、北九州市立総合体育館の設備点検や清掃、保守管理に従事。判決によると、体育館の機械室やアリーナなどの壁や天井には、石綿含有吹付けロックウールなどの石綿含有建材が使用されており、吹付材が劣化して剥がれ落ちたり、改修工事の際に大量の粉じんが飛散するなどしていました。
北九州市は、吹付け石綿ではなく吹付けロックウールが使用されていたから瑕疵はなかったと主張していましたが、判決は、本件体育館で使用されていた石綿含有率12%ないし14.5%の吹付ロックウールについても、遅くとも被害者が勤務を始めた当時(1990年5月)には、その危険性や除去等の必要性が世間一般に認識されていたと判断しています。
その上で、北九州市が石綿含有建材を除去するなどの飛散防止対策を講じず、吹付けロックウールが使用されていることを把握しながら、管理会社等に知らせて注意喚起したり、防じんマスク着用などの対策を指導することもなかった等と、所有者としての管理責任を厳しく認めています。
また、勤務先会社についても、「吹付けロックウールが使用されている建築物の保守・管理等を依頼されたビルメンテナンス業者は、石綿粉じんにばく露することにより、そこで作業に従事する従業員の安全性に疑念を抱かせる程度の危険性を認識することは十分可能であった」として、安全配慮義務違反を認めています。
*西日本新聞[全国初、アスベスト被害で北九州市の管理責任を認める判決 福岡地裁]
*毎日新聞[アスベスト訴訟で北九州市に賠償命令 福岡地裁、自治体の管理責任認める 全国で初]
*全国労働安全衛生センター連絡会議[設備管理労働者の石綿含有吹付ロックウールによる石綿肺がん、体育館所有者・北九州市と管理会社に賠償命じる判決]
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