【建設アスベスト訴訟】国に対する原告らの解決要求書 - 大阪アスベスト弁護団

【建設アスベスト訴訟】国に対する原告らの解決要求書

2020.12.24

2020年12月23日(水)、首都圏建設アスベスト訴訟原告団・弁護団・統一本部は、最高裁で東京1陣訴訟の勝訴判決が確定したことを受けて、国(内閣総理大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、環境大臣)に対する解決要求書を提出しました。

この日、田村厚労大臣には、原告団長の宮島和男さん(91)が「解決要求書」を手渡しました。これを受けて、田村厚労大臣は、被害者の救済のあり方を検討するため、厚労省と原告団との協議の場を作るよう省内に指示したとのことです。

原告・被害者は「こんな苦しみは自分たちだけで終わりにしてほしい。裁判をせずに早期に救済される制度をつくってほしい」という思いで13年間闘ってきました。国は、これ以上、原告・被害者を待たせることなく、建設アスベスト訴訟の全面解決へ向けて、直ちに動き出してください。

建設アスベスト東京第1陣訴訟勝訴判決確定による国に対する原告らの解決要求書(2020年12月23日)

1 要求の趣旨

 (1)(謝罪)

 国は、石綿含有建材使用により建設作業従事者が重篤な石綿関連疾患に罹患する被害の発生と拡大を防止せず、また解決を長引かせた責任を認め、上記訴訟原告らを含むすべての建設アスベスト被害者に対し、真摯に謝罪すること。

 (2)(賠償金の支払い)

 国は、最高裁判所の決定により責任が確定した建設アスベスト被害者原告らに対し、東京高裁判決に基づき賠償を行うこと。また、現在係属している建設アスベスト訴訟を早期に和解解決し賠償金を支払うこと。

 (3)(建設アスベスト被害補償基金制度の創設)

  国は、建設アスベスト被害補償基金制度を創設すること。そのために原告団、弁護団及び統一本部の代表らとの協議の場を設けること。

 (4)(建設現場での石綿粉じん曝露防止対策の強化)

  国は、今後の建築物の改修、補修及び解体等の作業から建築作業従事者並びに近隣住民等に石綿粉じんによる健康被害が発生しないように、最新の科学的知見・技術進歩を踏まえて万全の石綿粉じん曝露防止対策措置をとること。

 (5)(石綿関連疾患医療体制の整備・治療法の研究開発)

  国は、石綿関連疾患治療の医療体制を十分に整備し、その治療法の研究開発のための十分な予算措置をとること。

2 要求の理由

 最高裁判所は、本年12月14日、東京第1陣訴訟について、一審被告国が申し立てた上告を不受理としました。また、一審原告らの上告受理申立のうち、一審被告国に原判決で敗訴した一審原告のうち1名の上告を受理しました。この1名については、2021年2月25日に弁論が開かれることになっているため、この1名を敗訴させた原判決が見直されることは間違いありません。

 この最高裁決定により、一審被告国との関係では、上記1名の一審原告を除き、原審の東京高等裁判所第10民事部(大段享裁判長)の勝訴判決(認容額22億8147万6351円)が確定しました。すなわち、国が建築作業従事者の石綿粉じん曝露を防止するために、建築作業従事者(労働者のみならず一人親方及び中小事業主を含む)を使用する事業者及び石綿含有建材製造業者に対して、安衛法等の労働保護法令に基づく規制権限を適時にかつ適切に行使すべきであったにもかかわらず、これを怠ったとして、国賠法1条1項に基づき、国に対して損害賠償の支払いを命じた判決が確定したものです。

 建設アスベスト被害者は、厚生労働省が公表している統計によれば、労災及び石綿救済法に基づく認定者が8700名近くに及び、今後も毎年600名前後が20年以上にわたり新たに認定されることが見込まれ、その数は2万名を上回るとも予想されています。

 また、国は、2012年12月5日の東京第1陣東京地裁判決から2020年9月の東京第2陣東京地裁判決まで、5つの高裁判決を含め、14回にわたり賠償責任が認められたにもかかわらず、徒に上訴して争い続け、解決を引き延ばしてきました。その結果、全国の訴訟原告のうち7割以上の被害者が解決を見ずに亡くなっています。

 このように国の責任は極めて重大であり、国は東京第1陣訴訟原告らを含む全ての建設アスベスト被害者に対し、加害者として深甚なる反省に基づき真摯な謝罪がなされて然るべきです。

 また、上記最高裁決定により国の賠償責任が確定したので、同事件の原告らに対して速やかに賠償すべきは当然です。また、これにとどまらず、国の法的な責任内容が確定したのですから、これまで全国で起こされている全ての建設アスベスト訴訟の原告らについても早期に和解解決を図るべきです。

 私たちは、国に対し、8000名近くに及ぶ未提訴の認定者及び今後発症する建設アスベスト被害者全員を救済するための方策を確立すべきことを求め、「建設工事従事者に対する石綿被害補償基金制度」の創設を求めます。国は、私たちが求める石綿被害補償基金制度の創設に向けて、私たちとの協議の場を直ちに設けることを要求するものです。

 今後も、石綿含有建材の建築物の改修、補修及び解体等の作業は不可避です。この改修、補修及び解体等の作業によって、建築作業従事者及び近隣住民等が石綿粉じんに曝露させる危険性が極めて高い。その石綿粉じんの発生、飛散を防止するために、最新の科学的知見・技術進歩を踏まえて、万全の石綿粉じん曝露防止対策措置をとるよう対策の強化を求めます。

 最後に、石綿関連疾患に苦しむ被害者にとって、全国どこでも、十分な石綿疾患の治療を受けられる医療体制の提供と整備、不治とされる石綿関連疾患の治療法の研究・開発は何よりもの喫緊の要求です。そのための医療体制の整備と予算措置をとることを求めます。

 

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