北海道建設アスベスト1陣訴訟、札幌高裁判決(声明) - 大阪アスベスト弁護団

北海道建設アスベスト1陣訴訟、札幌高裁判決(声明)

2022.05.30

2022年5月30日、札幌高裁民事2部(長谷川恭弘裁判長)は、北海道建設アスベスト1陣訴訟について、建材メーカー4社(エーアンドエーマテリアル、ニチアス、エム・エム・ケイ、ノザワ)の責任を認める判決を言い渡しました。

不十分な点もありますが、基準慰謝料額を高い水準で認め、建材メーカーの責任割合を4~5割、責任始期を1974(昭和49)年とするなど、これまでの到達点をさらに前進させる判決です。

建材メーカーは、改めて法的責任が認められたことを真摯に受け止め、早期の全面解決へ向けて動き出すべきです。

【声明】北海道建設アスベスト1陣訴訟札幌高裁判決について(2022年5月30日)(pdf)

○北海道新聞:メーカー4社に賠償命令 札幌高裁判決 建設石綿1陣控訴審

○共同通信:石綿、メーカーに賠償命令 札幌高裁、39人へ1億6千万円

                            

2022年5月30日

声     明

北海道建設アスベスト第1陣訴訟札幌高裁判決について

 

北海道建設アスベスト訴訟原告団

北海道建設アスベスト訴訟弁護団

1 本日、札幌高等裁判所第2民事部(長谷川恭弘裁判長)は、北海道建設アスベスト第1陣訴訟について、被災者23名中16名のアスベスト被害に対する株式会社エーアンドエーマテリアル、ニチアス株式会社、株式会社エム・エム・ケイ及び株式会社ノザワの合計4社の責任を認める判決を言い渡した。

2 本日の判決は、最高裁が2021年5月17日の判決において示した判断、すなわち建材メーカーらには警告表示義務違反があり、被災者のアスベスト疾患の主要な原因となった建材を製造・販売したメーカーのうち一定のシェアを有する建材メーカーらは民法第719条1項後段の類推適用による共同不法行為責任を負うとの判断を前提として、あらためて本訴訟の被災者16名との関係で建材メーカーの責任を明確にしたものであり、その意義は極めて大きい。

3 他方、本判決は、合計7名について、建材メーカーの責任を否定した。

 そのうち3名は、主に解体作業に従事した被災者であるが、これまでの最高裁の判断において既設建材を扱う解体作業者等に対する建材メーカーの責任が認められた例がないとはいえ、建材メーカーにおいて既設建材についても広く建設作業者等にアスベストを含有する事実とアスベスト疾患罹患の危険性等を周知することは十分可能だったのであり、それを怠ったことは明らかであるから、本判決の判断は、原告らとしては受け入れることはできない。

 また、屋外作業を主とする1名についても、屋外建材等を製造販売したメーカーの責任を否定したが、最高裁は、大阪第1陣訴訟、京都第1陣訴訟では屋外作業者に対する建材メーカーの責任を否定したものの、九州第1陣訴訟においては、屋外用建材であっても屋内で切断等の作業をする場合があること等を理由として建材メーカーらの責任を認めた福岡高裁の判断を維持しており、その意味では、本判決が屋外作業者の作業の実態に踏み込む判断をしなかった点において、不当といわざるをえない。

 尚、判決は、企業の責任の始期を1974年とし、それ以後に石綿ばく露歴のない原告1名についても建材メーカーの責任を否定したが、建材メーカーには、それより以前から、建設作業者がアスベスト関連疾患に罹患することについて十分予見可能性があったことは明らかであるから、この点での本判決の判断は極めて残念である。

4 また、判決は、2名の被災者について、加害建材の被災者への到達等を認めず請求を棄却したが、被災者の職歴等の証拠からしても、加害建材の到達の事実は明らかであって、この点に関する判断も不当である。

5 本判決は、死亡した被災者について最高額2800万円の基準金額を認めたが、この点は、従来の基準を上回るものであり、評価できるものである。

 一方、本判決は、有責とされた企業の基本となる責任割合については、4割ないし5割と判断した。神奈川第2陣訴訟において、有責企業の責任割合を基本4分の3とする東京高裁の判断を最高裁が維持した例もあり、本件において有責とされた企業がいずれも建材メーカーの中でも高いシェアを有し、建材メーカーの先頭に立ってアスベスト被害を拡大してきた経過を考えれば、本判決が認定した責任割合は必ずしも十分とはいえないと考える。

6 本判決により責任があると判断された株式会社エーアンドエーマテリアル他3社の建材メーカーは、これまで最高裁を含めて繰り返し責任を認められているにもかかわらず、未だに責任を争い、和解解決にも応じていない。そのような態度は極めて不当であり、速やかに責任を認めて被災者に謝罪し、早期に和解解決すべきである。

 また、本判決では有責とされなかった建材メーカーも、深刻なアスベスト被害をもたらすことを知りながら、被害防止措置を講じないまま、アスベスト含有建材の製造・販売を続けてきたことにかわりはないから、アスベスト建材を製造販売したすべての企業はその責任を自覚し、速やかに基金制度創設に応じるべきである。

7 国は、建設アスベストの被害者救済のため本年2月から給付金制度を開始したが、屋外作業者はその給付対象から除外されている。

 国は、屋外作業者である被災者も屋内作業者と同様にアスベスト粉じんにばく露し、同様にアスベスト疾患に苦しんでいる事実を直視し、給付金の支給対象に屋外作業者を含める制度改正を速やかに行うべきである。

 また、建材メーカーらは、本判決によりあらためてアスベスト被害に対する加害責任が認められたことを踏まえ、その責任を自覚し、早期和解解決に応ずるとともに、速やかに基金制度創設に応じるべきである。

8 私達北海道建設アスベスト訴訟原告団・弁護団は、本判決を受けて全国の被災者、労働者、市民と連帯し、建設アスベスト被害者の早期完全救済とアスベスト被害の根絶のため、全力を尽くす決意をあらたにするものである。

以 上

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