船舶の艤装・修理作業に従事していた方が中皮腫で死亡し、示談交渉により和解金の支払いを受けられた事案
1 事案の概要
Xさんは、1968年から約20年間、大手造船会社であるK社の従業員として、船舶の艤装作業や修理作業に従事しました。
K社には労災認定を受けた従業員に対する上積み補償規定がありましたが、退職の前後で金額に格差があり、退職後に中皮腫を発症したXさんに対する補償額は現役労働者の半分とされていました。
しかし、当弁護団が依頼を受けてK社と交渉した結果、K社の上積み補償規定の満額(現役労働者と同じ水準)で和解することができました。
残念ながら、Xさんは交渉中に亡くなられ、和解書はXさんの遺族のYさんの代理人として取り交わすことになりました(2010年、和解成立)。
2 本件のポイント
Xさんは、造船作業に従事していた方です。
同じく仕事が原因で死亡したにもかかわらず、会社の都合により、退職の前後で補償額に格差を設けるのは不合理です。
特にアスベスト疾患は潜伏期間が長いため、退職後に発症することが通常です。当弁護団が示談交渉を行ったことにより、退職後に石綿関連疾患を発症した方について、現役労働者と同じ水準の労災上積み補償が認められたという点が大きな成果といえます。
(執筆担当:弁護士 伊藤明子)