製鉄会社の事務員として働いていた方が中皮腫で死亡し、示談交渉により和解金の支払いを受けられた事案
1 事案の概要
Xさんは1970年代の約5年間、大手製鉄会社であるI社に事務員として勤務していました。その後、Xさんは中皮腫にり患して亡くなり、その遺族であるYさんから当弁護団は相談を受けました。
Xさんの職歴や居住歴からはI社以外にアスベストにばく露する可能性がなかったことから、当弁護団がI社と交渉したところ、Xさんは石綿布などを保管していた倉庫に出入りすることがあったことが分かりました。
また、Xさんの中皮腫については、死亡時の確定診断がありませんでしたが、当時の資料に基づき専門医に意見書を作成してもらい、中皮腫であることを証明しました。
2009年、I社とYさんとの間で示談交渉が成立しましたが、和解金額は、判決で認められ得る慰謝料の水準を相当上回るものとなりました。
2 本件のポイント
Xさんは、製鉄会社の事務員としてわずか約5年間しか働いていなかった方なので、仕事の内容やアスベストのばく露状況は会社に残された資料から明らかにするしかありませんでした。
当弁護団では、示談交渉の中で、I社に対して、勤務当時にXさんが具体的にアスベストのばく露した可能性のある業務内容やアスベストのばく露状況等について詳細に照会をかけて、石綿ばく露状況を判明していき、判決で認められる慰謝料の水準を大きく上回る賠償金を得ることができました。
(執筆担当 弁護士 伊藤明子)