保温材製造等の業務に従事した労働者が元勤務先の会社に対して訴訟で損害賠償を請求し、訴訟上の和解により賠償金の支払いを受けられた事案
1 事案の概要
保温材製造会社H社の元従業員Xさんは、1987年から1988年までの約1年間、H社に勤務。保温材製造等の業務に従事した際、石綿にばく露し、H社を退職した約23年後の2011年11月にびまん性胸膜肥厚等を発症しました。その後、当弁護団に相談・依頼があり、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求めて、H社に対する訴訟を提起し、2020年4月、同社との間で和解が成立しました。
2 本件のポイント
裁判でH社側は、XさんのH社での勤務は短期間であり業務においてアスベストにばく露する機会はごくわずかであったなどと主張したため、XさんのH社勤務中のアスベストばく露状況が大きな争点となりました。
当弁護団では、文書提出命令を通じて労災記録の黒塗り部分を明らかにさせるとともに、元同僚からの聞き取りを実施したほか、裁判所に対し、Xさんが作業をしていた現場での検証を求めるなどして、H社の業務において石綿にばく露したことを丁寧に立証しました。これらの立証の結果、裁判所から双方に対し、H社の責任(安全配慮義務違反)があることを前提とした損害賠償金を認める内容の和解案が提示されました。
その後、双方ともに、裁判所からの和解案を受け入れ、訴訟が終了しました。
(執筆担当 弁護士 西本哲也)