工場内で石綿スレート製品(建材)の切断加工作業に従事した社員について、国家賠償金を受領したあと、建材メーカーから高額の和解ができた事案
【事案の概要】
Xさんは、1961年から1977年の16年間にわたり、有名な建材メーカーであるP社の工場内で、建材である石綿スレート製品の切断と加工作業、及び出荷業務に従事していました。
Xさんは2006年に肺がんとの診断を受け、長期の闘病を行った末、2011年に亡くなりました。
Xさんの死去後、ご遺族は、厚生労働省から工場型の石綿国家賠償請求について個別通知を受け取りました。そこで初めて、石綿被害について、国家賠償請求が可能であることを知り、当弁護団に依頼されました。
国家賠償金を得たあと、残る損害についてP社に請求し、裁判前の交渉をしました。しかし、P社からは低額の提案しかなされず、やむなく提訴へ。
裁判では、最初からP社の責任を前提に、裁判所の積極的な関与のもと、交渉段階から数百万円の上積みをした金額で調整が進められ、最終的に和解が成立しました。
このケースでは、建材製造工場の労働者について、国と企業の両方から賠償が得られたものです。厚労省の個別通知をきっかけに国、企業に対する請求を行い、最終解決まで繋がった、まさに埋もれていた被害の掘り起こしがなされた一例と言えます。
【本件のポイント】
・建材製造工場の労働者の事案です。
・国家賠償と企業賠償の両方を勝ち取った事案です。
(執筆担当:弁護士 藤原智絵)