実績(解決した事例)

肺がんの原因は石綿ばく露によるものではないとした労災不支給決定を裁判で覆し、労災認定を勝ち取った事案

【事案の概要】

 Xさんは、1959年から1986年まで大工として働き、20年以上を経た2007年2月に肺がんを発症しました。Xさんの肺組織からは石綿小体が998/g(乾燥肺)、石綿線維243万本/g(乾燥肺)が見つかったことから、石綿ばく露が原因で肺がんに罹ったものとして、2008年6月に労災申請(休業補償給付支給請求)を行いました。

 ところが、国は、2009年11月4日、労災の不支給決定を行いました。Xさんは不服申立をしましたが、2011年3月30日には審査請求棄却決定、同年10月には再審査請求棄却裁決を受けたことから、2012年4月18日、当弁護団が受任して、不支給決定の取消しを求める行政訴訟を提訴しました。

 国は、平成19年通達では石綿小体数が5000本を上回ることが必要とされているのに対し、Xさんの肺組織から見つかった石綿小体は998本/gであるから、石綿ばく露と肺がんの因果関係は認められないとして争いました。

 これに対し、弁護団は、申請時点の石綿関連肺がんの労災認定基準(平成18年基準)の要件は、①石綿ばく露作業への従事期間が10年以上あること、②肺内に石綿小体等が認められることの2つであり、Xさんはこれらの要件を明確に充たしており,地方労災医も因果関係を認める意見を述べていたのであるから、労災は認められるべきであると主張して争いました。

 

【判決の内容】

 2014年3月26日大阪地裁判決は、平成18年基準では、石綿ばく露作業の従事期間が10年以上あることに加えて石綿小体等が存在すれば足りるとしており、その本数は要件としていないとして、原告側の主張を全面的に認め、休業補償不支給決定の取り消しを命じました。

 被告国は、控訴しなかったので、地裁判決は確定し、Xさんの労災は認められました。

     

【本件のポイント】

 Xさんは、明らかに当時の労災の認定基準を満たしていたにもかかわらず、国の主張は、通達の内容を理由として石綿ばく露と肺がんの因果関係を争うという不合理なものでした。弁護団は、国が自ら定めた認定基準を不当に厳しくする平成19年通達を発出し、この運用によって労災認定を拒むのは不当であるとして徹底的に争い、全面的に勝訴しました。

 Xさんは、この裁判で勝訴したことで労災の休業補償、療養補償を受けることができ、その後、建設アスベスト大阪1陣訴訟にも原告として加わり、国と建材メーカーから賠償を受け取ることができました。

執筆担当:弁護士 小林邦子

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