誤嚥および窒息の原因が持病である腎不全のせいであるという労災不支給決定を訴訟で覆し、石綿関連疾患(びまん性胸膜肥厚)の労災認定を勝ち取った事案
【事案の概要】
石綿関連疾患であったAさんの夫亡Bさんは、食事中の誤嚥で死亡しました。Aさんは亡Bさんの遺族として遺族年金等の申請をしましたが、労基署は事故による死亡であるとして労災給付を認めませんでした。これに対し、労災不支給決定の取消を求めて裁判を提起。判決は、石綿関連疾患との因果関係を認め、労災不支給処分を取り消しました(大阪地方裁判所・平成29年7月29日判決言渡(確定))。
【判決の内容】
被告国は、訴訟の中で、亡Bさんの死亡は偶然の事故によるものであり、亡Bさんの呼吸状態が悪化していたのは、持病の慢性腎不全の悪化によるものと主張しました。しかし、判決は、原告であるAさんが主張するように、亡Bさんは、石綿ばく露に由来するびまん性胸膜肥厚の悪化に伴い、呼吸機能及び嚥下機能が極度に悪化していた反面、腎不全については適切な治療がなされ、その影響は限定的と考えられるので、びまん性胸膜肥厚が死亡に強い影響を与えた(相当因果関係が認められる)と判断しました。
【判決のポイント】
この訴訟での勝因は、原告が患者の石綿関連疾患及び腎不全の治療に関与した複数の専門医及び第三者の協力医の支援を得て、徹底した医学立証をしたことです。石綿関連疾患の被害者であった亡Bさんは、泉南アスベスト訴訟の元原告であり、石綿ばく露の原因となった就労先の企業に対する損害賠償請求訴訟、泉南アスベスト訴訟、本件行政訴訟の3回の裁判に全て勝訴しました。
(執筆担当:弁護士 八木倫夫)