労災不支給決定取消訴訟(因果関係)
石綿紡織工場の元労働者で、石綿疾患であるび慢性胸膜肥厚で労災認定を受けていた被害者Xさんが、入院中に少量の食べ物の誤嚥を契機として亡くなった事案について、2017年7月19日、大阪地方裁判所は、石綿ばく露による労災であると認め、労働基準監督署の行った遺族年金等の不支給処分を取り消す判決を下しました(国は控訴せず、確定)。
Xさんは、泉南アスベスト訴訟の原告でもあり、当弁護団で長らくサポートしてきた人です。
石綿疾患の進行により、重度の肺機能障害となり、衰弱していたため、健康な人なら自力で吐き出せる程度の少量の誤嚥にもかかわらず、かつ、直ちに近くにいた医師から蘇生措置を受けたにもかかわらず、低酸素脳症となり、意識が戻らずに亡くなったことから、石綿疾患で肺機能が低下し、衰弱していたことが原因であることは明らかです。
しかし、労働基準監督署は、偶然の事故であり、仮に病気の影響があったとしても、持病である腎不全の影響が大きいとの理由で、労災を認めませんでしたので、どうしても納得できない遺族は、弁護団に依頼し、労災不支給決定の取消しを求める行政訴訟を提起しました。
原告側は、重篤な石綿疾患がなければ、誤嚥することはなく、誤嚥したとしても亡くなることはなかったし、腎不全が死亡に与えた影響は小さいと主張し、医師の協力を受け、丁寧に立証したところ、裁判所は、原告側の主張をほぼ認めました。
労災認定を受けていた石綿疾患やじん肺の患者が、誤嚥を契機に亡くなるケースは決して稀ではありませんので、本件判決を契機として、同様の方の救済が進むよう、期待します。