実績(解決した事例)

電気工事に従事していた方が中皮腫で死亡し、安全配慮義務違反に基づく使用者企業の責任が最高裁判所でも認められた事案(賠償額約4400万円)

【事案の概要】
 Xさんは、1962年頃から2006年までの約45年間、電気工事会社である中央電設(株)の従業員、専属下請として、学校や病院、市営住宅などの電気工事に従事しました。配管・配線作業を行う中で、梁や天井の吹付材に触れたり、照明器具等の設置のため天井材を切断(開口作業)したりする中で、アスベストにばく露しました。
Xさんは、2004年に中皮腫と診断された後も電気工事の仕事を続け、診断から2年後の2006年10月に亡くなりました。享年59歳でした。
2010年7月、遺族である妻と長男が原告となり、中央電設(株)を被告として、大阪地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起しました。
 当弁護団では、建築現場や電気工事における石綿ばく露実態を詳細に立証したほか、Xさんが担当した建築現場の設計図書を入手し、建物ごとの石綿含有建材の使用状況を明らかにしました。これを受け、判決は、新築・改修工事、建物規模の大小を問わず、電気工を含む建築作業従事者が様々な場面でアスベストにばく露する実態を事実認定しました。このことは並行して進んでいた建設アスベスト訴訟の立証にも大いに役立ちました。
 中央電設(株)は、石綿の危険性を予見できなかったと主張して最高裁まで争いました。

           

【判決の内容】
 2014年2月7日、大阪地方裁判所は、中央電設㈱の責任を全面的に認める原告勝訴の判決を言い渡しました。2014年9月26日の大阪高裁判決もほぼ同様の判断を示し、2015年9月8日の最高裁決定により、中央電設(株)に慰謝料2500万円を含む約4400万円の支払を命じる判決が確定しました。
 判決のポイントは以下のとおりです。

① 電気工の石綿ばく露実態
 判決は、原告の主張をほぼ全面的に認め、電気工の発じん作業による石綿曝露、同時並行・混在作業や清掃による石綿曝露、建築現場の密閉化など、石綿ばく露実態を詳細に事実認定しました。ほかまた、石綿含有建材の製造期間や販売状況、就労が判明した9カ所の現場図面に基づく、各建物の石綿含有建材の使用状況(建材の種類、メーカー含む)を細かく認定しました。

② 予見可能性
 石綿の危険性については、抽象的危険の認識で足りるとし、会社側の、建材に石綿が含まれていたかどうかは分からなかった、電気工事会社には使用する建材を選択する余地はなかったといった会社の主張を退けました。その上で、Xさんが就労を開始した1962年時点での予見可能性を認めました。
 大阪地裁判決は、海外では、「石綿肺の危険性は1930年頃、発がん性については1955年頃、中皮腫との関連性については1960年代までに」医学的知見が確立していたと指摘しています。

③ 安全配慮義務違反
 安全配慮義務の内容としては、主に、ア)防塵マスクの支給・着用徹底、イ)安全教育・健康診断、ウ)立入禁止区域の設定・周知を挙げ、1962年~平成に入る頃まで(会社が防護服着用の指示指導を始めたと主張した時期)、会社がこれらの義務を履行しなかったこと(不作為)の違法を認めました。
 従業員期間だけでなく、個人経営者または法人としての下請業者(自営業者)であった期間についても、支配従属関係を認めています。

【掲載誌】
○大阪地裁判決
判例タイムズ1410号212頁
判例時報2218号73頁

○大阪高裁判決
労働判例ジャーナル34号45頁

【本件のポイント】
・電気工事に従事していた方について使用者企業の責任が認められた事案です。
・建築作業従事者のアスベスト被害について、使用者企業の責任を認めた初めての最高裁判決です。

執筆担当:弁護士 伊藤明子

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