内装工だった方が石綿肺に罹患し、元請会社である大手ゼネコンとの裁判上の和解により高額賠償を受けられた事案
1 事案の概要
Xさんは、1964年から約30年間、下請会社の従業員ないしその孫請として、軽天下地(天井裏の鉄骨の骨組を作る作業)やボード貼りなどの作業に従事しました。Xさんは、作業中に鉄骨に吹き付けられたアスベストをそぎ落とす(「はつる」)などしたため、大量のアスベストに曝露し、石綿肺及び続発性気管支炎(管理2+合併症)に罹患。2006年2月1日にC工務店を被告として損害賠償請求訴訟を起こしました。本件は、建設労働者が大手ゼネコンを被告として起こした、全国初のアスベスト訴訟です。
建設労働者によるゼネコンに対する訴訟特有の問題として、現場特定の難しさがあります。本件訴訟では、Xさんの記憶だけを頼りに、かつてXさんが軽天下地などの作業をしたビルを探し求め、最終的には54カ所の現場を特定しました。Xさんの記憶では、そのうちC工務店の現場が約8割でした。C工務店は現場特定を含むあらゆる争点について徹底的に争ってきましたが、Xさんの体調悪化を踏まえ、裁判所の強い意向で和解協議が進められました。
和解にあたって裁判所が考慮した事情はおおむねXさんの主張に沿う内容で、和解金額もそれまでの慰謝料水準(筑豊じん肺控訴審判決:管理2+合併症の場合1300万円)を超える勝訴的和解でした(2009年11月6日、大阪地方裁判所で和解成立)。また、C工務店は謝罪条項として「心から遺憾の意」を表明しました。
2 本件のポイント
内装工事に従事していた方が、現場を特定できたことから、元請会社との間で高額和解ができた事案です。
(執筆担当:弁護士 伊藤明子)