建設現場ではき屋として働いていた方が中皮腫で死亡し、元請会社との裁判上の和解により賠償を受けられた事案
1 事案の概要
Xさんは、1966年から1974年頃までの約8年間、D建設の下請会社に勤務し、「はき屋」の作業に従事していました。「はき屋」とは、資材の片付けや養生、清掃作業など、建築作業の開始から終了までの雑用一切を行う職種で、建材から飛散したアスベストにばく露します。Xさんは、腹膜中皮腫を発症し、2000年10月に69歳で亡くなりました。
Xさんの娘Yさんは、2007年10月、元請であるD建設を被告として損害賠償請求訴訟を提起。
裁判では、元請であるD建設の現場を含む建設現場でXさんがアスベストにばく露して中皮腫を発症したことを確認した上、Xさんが働いた現場の多くが特定困難であったこと、Yさんに石綿救済法に基づく特別遺族一時金の支給があったことなどを踏まえ、解決金1800万円を支払う内容での和解解決に至りました(2010年8月3日、大阪地方裁判所で和解成立)。D建設は和解条項の中で、Yさんに遺憾の意を表明するとともに、「今後も建設現場における石綿粉じん曝露事故の防止に努める」ことを約束しています。
2 本件のポイント
建設現場ではき屋として働いていた方が、一部の現場を特定でき、元請会社との間で和解ができました。
建設アスベスト訴訟における国や建材メーカーの責任期間(概ね1975~2004年)より前に石綿ばく露した方の事案です。
(執筆担当:弁護士 伊藤明子)