配管設備会社の現場監督に従事しアスベスト肺がんで亡くなった被害者の遺族が賠償を勝ち取った事案
1 事案の概要
被害者のAさんは1967年から約40年間、配管設備工事の現場監督(施工管理)に従事し、被告の会社には、1980年から勤務しました。配管設備工事の現場監督業務では、施工図や施工要領図の作成、現場の巡回、職人への作業指示、品質管理等を行い、長時間、建築現場に滞在することになります。同業務において、Aさんは石綿含有配管の切断作業や配管の断熱のために行われる保温材の切断、清掃作業の際に発生したアスベスト粉じん等に間接的にばく露しました。その結果、退職後に肺がんを発症し、50代の若さで死亡しました(生前に労災認定されています)。
当弁護団は遺族より依頼を受け、提訴に先立ち裁判所に証拠保全手続を申し立てました。この手続でAさんが従事していた建築現場の仕様書や図面等を勤務会社から入手し、これによりアスベスト建材が使用されていたこと、同社の現場でアスベスト粉じんに曝露したことが明らかとなりました。
その後、遺族が2010年に提訴し、2年間の審理を経て、2012年、相当額(高額と評価できる)の賠償を受ける内容で被告勤務先会社との裁判上の和解が成立しました。
2 解決のポイント
やはり現場におけるアスベストばく露の立証に尽きます。
本件では、Aさんが残した仕事に関する手帳、提訴に先立って申し立てた証拠保全手続で得た現場の仕様書や図面等、被災者の労災記録(個人情報開示請求で入手)、同僚の陳述書等、豊富な立証活動によって、勤務先会社でのアスベストばく露を立証し、優位に裁判を進めることができました。勤務先会社が防じんマスク着用の徹底や安全教育等の安全対策を怠っていることは明らかであり、証人尋問手続きの後、裁判官の熱心な和解勧試があって、判決で認められうる慰謝料を上回る水準の解決金を受領する内容での裁判上の和解を勝ち取ることができました。