大手造船会社で溶接作業に従事しアスベスト関連疾患に罹患、死亡した事案で、判決で認められる程度の高水準の裁判上の和解を勝ち取った事案
1 事案の概要
被害者は、1948年から約35年間、大手造船会社の従業員として、船舶の溶接作業に従事しました。溶接作業は、火除け(養生)等に石綿布を使うため、アスベストにばく露することの多い業務です。被害者は退職後、胸膜中皮腫を発症し、亡くなりました(労災認定)。同社には社内における補償規定(いわゆる上積み補償)がありましたが、被害者は比較的高齢でアスベスト関連疾患に罹患し、亡くなったことから、社内規定では極めて低額の補償しか受けられないとのことでした。
遺族は、社内規定での補償は不十分として、2011年、勤め先企業の法的な責任(安全配慮義務違反)に基づく正当な賠償を求め、大阪地裁に提訴しました。その後、約1年足らずという比較的短期間の審理を経て、2012年に、判決で認められる慰謝料とほぼ同水準の解決金を受け取る内容での裁判上の和解が成立しました。
2 解決のポイント
造船業は建設業に次いでアスベスト被害が多発している職場であり、その中でも溶接作業での火除け(養生)で石綿布を使用してアスベストにばく露し、アスベスト関連疾患を罹患した被害者が多数存在します。このようなばく露実態や、会社がしかるべき粉じん対策(防じんマスクの着用の徹底等)を怠っていたことにつき、社内資料に基づき的確に立証したことから、早期かつ高水準の裁判上和解を勝ち取ることができました。
同様の被害者が多発していることからも、その勝ちとった経験を活かし他の被害者の救済、補償につなげていきたいと考えています。
(執筆担当 弁護士 谷真介)