原料アスベストをトラックで運搬していた方が勤め先から高額賠償を受けられた事案
1 事案の概要
Xさんは、1980年代後半頃から90年代前半頃まで、運送会社のG社でトラック運転業務に従事していました。その間、Xさんは、港湾の倉庫から納品先である阪神間の工場まで、原料アスベストの入ったビニール製の袋を運搬し、荷積み・荷卸しの際に袋からこぼれ出たアスベストにばく露しました。
その後20年以上アスベストとは関係のない仕事をしていましたが、2016年2月に胸膜中皮腫を発症しました。当弁護団の弁護士が相談を受けて労災申請を受任し、労災認定を得ることができたものの、その直後の2016年8月、Xさんは48歳の若さで命を落としました。
遺族のYさんは、2018年3月にG社に対して損害賠償請求訴訟を提起したところ、G社は、アスベストの入った袋は密閉されていたなどとして、Xさんのアスベストばく露を争いました。しかし、当弁護団は、生前にXさんよりアスベストの入った袋の運搬作業の状況を聞き取ってビデオ録画し、同時期にG社で働いていた方のお話も聞き取りしていたので、それらをまとめて提出するなど、具体的に作業、ばく露状況を立証しました。また、当弁護団は、港湾荷役作業でのアスベストばく露の実態や、アスベスト袋のトラック運搬の仕方など、これまで蓄積していた経験や資料(例えば、三井倉庫事件などがあります)を用いて、豊富な証拠を提出することができました。さらに、あらかじめG社の財産を仮差押によって確保していました。
その結果、2019年5月、G社に責任があることを前提にした和解解決をすることができました。
2 本件のポイント
原料アスベストを運搬していた方が、早期に相談いただいたことで証拠を確保でき、高額賠償を受けられた事案です。
(執筆担当:弁護士 安原邦博)