「除斥期間・長期消滅時効の起算点の取扱い変更に対する抗議及び申入書」を厚労省に提出しました
2025.06.10石綿肺被害者の遺族が国に対し損害賠償を求めた訴訟において、2025年4月17日に大阪高等裁判所で逆転勝訴したことを受けて、本日、厚生労働省に対して、以下の抗議及び意見を申し入れました。
=============================================
大阪アスベスト弁護団として貴庁に対し下記のとおり申し入れます。
記
1 令和7年4月17日、大阪高等裁判所第2民事部は、石綿肺(じん肺管理区分2・非合併)の被害者の遺族が国に対し損害賠償を求めた訴訟(令和6年(ネ)第200号)において、旧民法724条後段の20年の除斥期間の起算点を「最終の行政上の決定を受けた時」として被害者が管理区分2の行政上の決定を受けた日と判断し、一審原告勝訴の判決を言い渡しました。
これに対し、国は上告せず、同判決は同年5月2日に確定しました。
2 同判決の確定を受けて、同日、貴庁はホームページ「石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々との和解手続について」における「アスベスト訴訟における和解について」「ウ、提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。」の項目に「損害賠償請求権の存続期間の取扱いについて(PDF)」をアップし、「アスベスト訴訟の和解における除斥期間・長期消滅時効の起算点について、国は現在、以下のとおり取り扱っております。」として、概要下記の情報を掲載しています。
① 石綿関連疾患の発症に係る損害賠償請求
・石綿肺:最も重い行政上の決定日(じん肺管理区分決定日)
・肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水:発症日
② 石綿関連疾患による死亡に係る損害賠償請求
・石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水:死亡日
・肺がん、中皮腫:発症日
これは、大阪・泉南アスベスト2陣控訴審判決および最高裁判決を受け、被害者が提訴することで国が損害賠償金を支払ってきた工場型アスベスト訴訟(司法救済システム)の従来の取扱いから、石綿肺を除く石綿関連疾患を発症した被害者(上記①)、および肺がん・中皮腫で死亡した被害者(上記②)について、時効・除斥期間の起算点を遡らせた対応を続けることを表明したものです。
3 そもそも、大阪泉南アスベスト訴訟最高裁判決後、第1陣・第2陣の原告と面会して謝罪するとともに、当時の担当大臣は、「第1陣訴訟・第2陣訴訟で国の責任が認められた原告の方々と同様の状況にあった石綿工場の元労働者の方々についても。第1陣訴訟・第2陣訴訟の最高裁判所の判決に照らして、訴訟上の和解の途を探ることといたします。」との談話を発表し、大阪泉南アスベスト訴訟と同様の状況にあった石綿工場の元労働者の方々について、規制権限不行使の責任を前提として、損害賠償金の支払いについて同様の取扱いをすることを約束しました。
そして、かかる約束に基づき、被害者らと国は、除斥期間・長期消滅時効の起算点は、最終の行政上の決定時および死亡日であるとの共通認識の下で約5年間にわたり、訴訟上の和解を積み重ねてきました。また、建設アスベスト給付金の除斥期間・長期消滅時効の起算点の取扱いにおいても、最終の行政上の決定時および死亡日とされています。
4 今回の大阪高裁判決は、除斥期間の起算点を最終の行政決定時とした理由として「法的明確性・客観性の観点」を挙げており、法的安定性が求められる除斥期間・消滅時効の起算点について国が取扱いを変更したことの不合理性を指摘しました。
そこで、当弁護団は、貴庁に対し、石綿肺以外の石綿関連疾患についての除斥期間・長期消滅時効の起算点の取扱いを変更したことについて強く抗議するとともに、速やかにこれらの除斥期間・長期消滅時効の起算点を、令和元年10月14日以前の従来の取扱い(令和元年9月27日福岡高等裁判所判決を根拠とした変更前の取扱い)に戻し、石綿関連疾患を発症した被害者については最終の行政上の決定時、石綿関連疾患で死亡した被害者については死亡日にすることを申し入れます。
また、過去に工場型アスベスト訴訟を提起した石綿肺の被害者について、国が除斥期間・長期消滅時効の起算点を争ったため、取下げに至った事案がないかを早急に精査し、適切な対応をとることを求めるものです。
私たちにご相談下さい。
アスベスト被害に関するご相談は無料です。
アスベスト被害ホットライン
0120-966-329
(平日の10時~18時)
折り返し、
弁護士が直接ご連絡します。
- 私たちは建設アスベスト訴訟を提起・追行し、最高裁で賠償・救済を勝ち取りました。
- 詳しく見る >