石綿肺被害者の国に対する損害賠償請求 控訴審で逆転勝訴!
2025.04.172025年4月17日、大阪高等裁判所第2民事部で、石綿肺の被害者の遺族原告が国に対し損害賠償を求めている訴訟、20年の除斥期間が経過したとして原告の請求を排斥した一審判決を覆し、原告の逆転勝訴判決を言い渡しました。
以下、当弁護団の声明を掲載しています。
声明
2025(令和7)年4月17日
大阪アスベスト弁護団
1 大阪高等裁判所第2民事部(三木素子裁判長)は、本日、石綿肺(じん肺管理区分2・非合併)の被害者の遺族原告が国に対し損害賠償を求めている訴訟において、旧民法724条後段の20年の除斥期間が経過したとして原告の請求を排斥した一審判決(大阪地裁第9民事部)を覆し、原告逆転勝訴の判決を言い渡した。
本件はアスベスト被害のうち、大阪・泉南アスベスト国賠訴訟の最高裁判決を受けて、工場内で粉じんにばく露しアスベスト関連疾患を発症した被害者に対し、国が訴訟上の和解によって損害賠償金を支払う、いわゆる工場型アスベスト訴訟の1つである。
2 国は、工場型アスベスト訴訟において、石綿肺の被害者に対し、長崎じん肺最高裁判決、筑豊じん肺最高裁判決、泉南アスベスト2陣控訴審判決に基づき除斥期間の起算点である「損害の全部又は一部の発生したとき」について「最終の行政決定を受けた日」として訴訟上の和解に応じてきた。また、同様の考え方で建設アスベスト被害に関し令和3年5月17日の最高裁判決を受けて創設され、令和4年1月19日に施行された建設アスベスト給付金法の支給対象としてきた。
ところが、令和元年9月27日福岡高裁が、石綿由来の肺がんに基づく損害賠償請求の遅延損害金の起算日を「確定診断日」と判断したことを契機に、国民に周知することなく秘密裏に従来の取扱いを変更して、遅延損害金の起算日だけでなく、石綿肺を含む石綿関連疾患に基づく損害賠償請求の除斥期間の起算点を「症状が発生した日」に遡らせて除斥期間が経過しているとの主張を行い、取扱い変更後の主張によれば除斥期間が経過していることとなる被害者への和解による損害賠償を拒絶するようになった。
3 しかしながら、この国の態度変更は、国が賠償責任を負うべき被害者の権利を失わせるものであり、しかも、国民に対して一切知らせることなく、これまで積み上げてきた一連の最高裁判決の判断を覆し、法的安定性を害するとともに、アスベスト被害者の信頼を裏切るものであり、到底許されるものではない。
にもかかわらず、本件における令和5年12月20日の一審・大阪地裁判決(達野ゆき裁判長)は、じん肺(石綿肺)を発症した時を証拠上認定できる場合は、それがじん肺管理区分決定より前であったとしても、同時点が除斥期間の起算点となるとして国の主張を認め、原告らの損害賠償請求権は除斥期間によりすでに消滅しているとして原告の請求を棄却する極めて不当な判決を言い渡した。
これに対し、本判決は、除斥期間の起算点を従前一連の最高裁判決が判示していた「最終の行政決定を受けた日」とし、原告らの請求権は除斥期間は到来していないとして、国に対する損害賠償請求を全額認容した。
本判決が、国の主張を認めた不当な一審判決および国の態度変更の誤りを明確に認めた意義は極めて大きい。また、国は別訴において、悪性中皮腫で死亡した被害者についての長期消滅時効(現行民法724条後段・20年)の起算点についても、これまでと異なる解釈をして遡らせて争い、被害者を苦しめており、本判決は別訴原告の主張の支えともなりうるもので重要である。
4 本件と同じ石綿肺の争点について、原告側が一審敗訴・控訴審逆転勝訴した別訴も令和7年2月、国の上告不受理決定が出ており、もはや国の解釈に合理性も正当性も認められない。国に対し、本件について上告を断念して損害賠償に応じるとともに、あらゆる石綿関連疾患の除斥期間・長期消滅時効の起算点の取扱いを速やかに従前の一連の最高裁判決が示した被害者救済に沿ったものに戻すことを求めるものである。
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