建設アスベスト給付金法の施行にあたって - 大阪アスベスト弁護団

建設アスベスト給付金法の施行にあたって

2022.01.19

(こちらの記事は、今般の建設アスベスト給付金法の施行に関して、当弁護団も所属する建設アスベスト訴訟全国弁護団が発した声明文のご紹介になります。)

 

建設アスベスト給付金法の施行にあたって

2022年1月19日

建設アスベスト訴訟全国連絡会

建設アスベスト訴訟全国弁護団

1 給付金の施行

昨年5月17日に国の規制権限不行使の違法と建材メーカーの共同不法行為責任を認めた建設アスベスト訴訟最高裁判決を踏まえ、同年6月9日の通常国会で成立した「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」(建設アスベスト給付金法)について、認定審査会関係や基金の設置関係の規定など一部の規定は同年12月1日から施行されていたが、給付金の支給に関する規定などの全ての規定が、本日1月19日より施行されることとなった。

これにより、建設アスベスト被害者は、裁判を起こさずとも、厚労省に必要書類添えて請求することにより、国が設けた基金から、その症状の程度に応じて550万円~1300万円の給付金を受けとることができるようになった。

2 給付金の意義

この給付金制度は、国の賠償責任に限定されてはいるものの、原告らが提訴以来求めてきた建設アスベスト被害者補償基金制度を一部実現するものであり、被害者の迅速な救済に資するものとして高く評価できる。

本給付法の施行については、公布の日(2021年6月16日)から1年以内と定められ、当初、本年4月ころの施行が予想されていたが、厚労省の努力により本日施行されることとなった。また、これに先立ち、昨年12月1日から労災認定等情報提供サービスも始まっており、簡易迅速な給付金の支給に大きな期待が高まっている。

3 今後の給付金の運用と審査の課題と要望

もっとも、被害者の迅速な救済が実現できるかは今後の運用にかかっている。アスベスト被害は潜伏期間が長く、また予後も悪く多くの被災者が亡くなっている。そのため、過去の客観的な資料が散逸し、廃棄されているケースも少なくない。したがって、必要以上に厳格な審査を求めるとすると、簡易迅速な救済が図られないばかりでなく、真に救済されるべき被害者の救済が阻まれる恐れがある。具体的には、就労歴の認定等については、関係者の陳述や申述等の内容が、明らかに不合理でない場合には柔軟に石綿粉じん曝露の事実を認定をすべきである。国は、本給付法の趣旨及び本件の特質を踏まえた柔軟な対応を心掛けるべきである。

同時に、国は、被害者に対する完全補償を実現するために、本給付法附則第2条に基づき、第一次的加害者であるアスベスト建材メーカーに補償基金へ応分の拠出をさせるための法改正に着手するとともに、屋外作業者や期間外作業者をも救済できる差別のない完全な補償基金制度実現に向けて検討を開始すべきである。

 

4 周知の徹底

現在、建設業のアスベスト疾患による労災認定者は累計で約1万人おり、石綿救済法による認定者も含めると、本給付法の対象者は1万数千人に上る。また、建設業のアスベスト疾患による労災認定者は、毎年約600人ずつ増えており、今後30年間に約2万人の被害者が発生すると予測されている。こうした被害者をもれなく迅速に救済するためには、徹底した広報が必要である。国は、昨年12月1日以降、約1000人に本給付制度の個別案内を行ったということであるが、まだまだ不十分であり、対象となる労災認定者全員に個別通知を速やかに行うとともに、建設の職歴の把握できている石綿救済法の認定者に対しても個別通知を行うべきである。また、新聞・テレビ・ラジオ等を通じた広報も実施すべきである。

 

5 当弁護団の相談受け皿

私たちもホームページを開設し〔建設アスベスト訴訟全国弁護団(kenasu.jp)建設アスベスト訴訟全国連絡会(asbesutos-syutoken.com)〕、本給付制度の広報に努めるとともに、常設のフリーダイヤル電話(0120-793–148)を設置し、全国どこからかかってきても最寄りの弁護団が相談に応じられる体制を整えた。

現在、建材メーカーとの裁判は続いているが、私たちは、裁判手続きを速やかに進めるとともに、建設アスベスト被害者が早期に救済されるよう、全てのアスベスト被災者及び支援者と連帯を強め、闘う決意である。

以 上

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