建設アスベスト大阪2陣3陣訴訟大阪地裁判決ー建材メーカー12社の責任を認めるー
2023.06.302023年6月30日、大阪地方裁判所第16民事部(石丸将利裁判長)は、関西建設アスベスト大阪2陣・3陣訴訟につき、原告ら勝訴の判決を下し、建材メーカー12社に総額9億4297万円余の賠償(慰謝料、弁護士費用のみ。遅延損害金を除く)を命じました。
〇NHKニュース :建設アスベスト訴訟 12社に9.4億円余賠償命令 大阪地裁
〇MBS毎日放送 :【速報】建設アスベスト訴訟 メーカー12社に約9.4億円の賠償を命じる 大阪地裁
〇読売新聞オンライン:建材アスベスト訴訟、メーカー12社に計9億4200万円の賠償命じる…大阪地裁
〇TBS NEWS :【速報】建設アスベスト訴訟 メーカー12社に約9.4億円の賠償を命じる 大阪地裁
〇日テレNEWS :【速報】「建設現場でアスベストを吸い込み肺がん発症」大阪地裁が12社に約9・4億円支払い命じる
以下、本日発表した声明です。
声 明
関西建設アスベスト大阪2陣・3陣訴訟大阪地裁判決について
2023(令和5)年6月30日
関西建設アスベスト大阪訴訟原告団・弁護団
関西建設アスベスト訴訟統一本部
1 本日、大阪地方裁判所第16民事部(石丸将利裁判長)は、関西建設アスベスト大阪2陣・3陣訴訟において、被害者73名中64名(原告数129名中104名)のアスベスト被害に対する被告建材メーカーの責任を認め、過去最多である被告建材メーカー12社(エーアンドエーマテリアル、ニチアス、ノザワ、エム・エム・ケイ、日鉄ケミカル&マテリアル、太平洋セメント、大建工業、日東紡績、パナソニック、神島化学、日本インシュレーション、積水化学)に対して、原告らに対し総額9億4297万7827円の支払いを命じる原告勝訴判決を言い渡した。
本判決は、建設現場において石綿建材から飛散する石綿粉じんにばく露し、肺がん・中皮腫などの重篤な疾患に罹患した建設作業従事者とその遺族が、石綿建材の製造販売メーカーに賠償を求める建設アスベスト訴訟の1つであり、2021(令和3)年5月17日の最高裁判決後5つ目の判決である。
2 本判決は、上記最高裁判決が示した判断、すなわち建材メーカーらの警告表示義務違反を認め、被害者の石綿疾患の主要な原因となった建材を製造・販売したメーカーのうち一定のシェアを有する建材メーカー等は民法第719条1項後段の類推適用による共同不法行為責任を負うとの判断を踏まえて、上記建材メーカー12社の共同不法行為責任を明確にした。
とりわけ、本判決は、他の建設アスベスト訴訟で責任が認められていた10社に加えて、パナソニック(吸音天井板)と日本インシュレーション(保温材)の2社の責任を認めるもので、実態に基づき救済対象を広げたものといえる。
また、本判決は、注意義務の始期について、吹付作業従事者との関係では1971(昭和46)年4月1日、屋内作業従事者との関係では1974(昭和49)年1月1日とした。他の判決では、1975(昭和50)年を注意義務の始期とする判断が散見される中、事実・実態に基づき救済対象を広げたものである。
3 本判決は、石綿疾患により死亡した被害者の慰謝料額を最高2950万円とした。また、被告建材メーカーらの寄与度割合も高く認定した。これは、アスベスト被害及び石綿粉じんばく露の実態を踏まえた判断であり、妥当である。
4 一方で、本判決は、被害者9名について、建材メーカーの責任を否定した。
そのうち、外装材を取り扱う職種について、屋内で加工作業をする例外は認めたものの、3名との関係では建材メーカーの責任を否定した。
また、本判決は、解体作業関係に従事した被害者3名に対する建材メーカーの責任を否定した。建材メーカーが、自社が製造する建材に石綿が含有している事実や石綿疾患罹患の危険性等を表示するなどして、その危険性を解体作業従事者に伝達することは十分に可能であって、何よりそのような対策を一切怠っていた建材メーカーらの責任を否定することは誤りである。
加えて、本判決は、3名の被害者について、主要原因建材が被害者に到達したとは認められないとして請求を棄却した。請求が棄却された被害者らも、石綿建材の危険性について知らされないまま、建設現場で石綿粉じんにばく露した事実に変わりはない。裁判所には、被害者救済や公平の見地から、建設アスベスト訴訟の特質に即した判断が求められるところ、本判決はこれらを十分に考慮しているとはいえない。
5 本訴訟では、2016(平成28)年の提訴後、約7年が経過し、被害者73名のうちすでに49名が亡くなっている(うち提訴後に亡くなった原告は21名に及ぶ。)。原告らの「命あるうちに救済を」の願いは切実である。ところが、本訴訟で責任を認められた上記被告12社は、一部を除き、最高裁判決を含めて何度も敗訴判決を受けているにもかかわらず、未だに争う姿勢を取り続けており、話し合いのテーブルに着こうとさえしない。被害の実態を直視しようとしない、極めて不当な態度である。上記被告12社は、本判決を真摯に受け止め、被害者らに謝罪すると共に、控訴せず直ちに賠償に応じるべきである。
この間、最高裁判決後に出された本判決を含む5つの判決により、最高裁判決で積み残された主要な争点についての判断が一定の範囲に収斂されつつあり、被害者救済の道筋が示された。全面解決のための土台はできあがった。本判決で有責とされた上記被告12社はもちろんのこと、すべての建材メーカーも、深刻なアスベスト被害をもたらすことを知りながら、被害防止措置を講じないままに石綿建材を製造販売してきたことに変わりはない。建材メーカーらは、建設アスベスト訴訟の全面解決へ向けて「建設アスベスト被害補償基金制度」(仮称)の創設に直ちに着手すべきである。
私たちは、アスベスト被害の救済と根絶のため、全国の被害者、支援者、市民らと連帯して、引き続き全力を尽くす決意を新たにするものである。
以上
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