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旧アルナ工機元従業員・窓枠サッシ取り付け作業で工場型石綿国賠の和解成立

2025.01.15

旧アルナ工機株式会社の車両製造工場内で、窓枠サッシ取り付け作業に従事していた被害者の方のアスベスト国賠訴訟について、令和6年11月27日、国との和解が成立しました。

 

被害者のAさんは、昭和32年6月から平成2年8月まで、旧アルナ工機に勤めていた方です。Aさんは、少なくとも国の責任期間である昭和33年5月から昭和46年4月までの間、内装作業工程として、電車車両の窓枠サッシを取り付ける作業に従事していました。

Aさんは、平成26年7月に悪性胸膜中皮腫に罹患し、平成27年12月に85歳で亡くなりました。

ご遺族はAさんの死亡後、労災請求をできずにいましたが、令和4年12月に当弁護団に相談をされ、旧アルナ工機の事業を承継したアルナ車両株式会社からの聞き取り等を経て、石綿健康被害救済法に基づく特別遺族年金(いわゆる労災時効救済)の請求を行った結果、令和5年2月下旬にスピーディな認定を受けました。その上で、令和5年8月に臨んだ国賠請求でした。

 

旧アルナ工機では、かつて、阪急電車を含む各種車両において、車両の天井(屋根部分)に耐火被覆の石綿吹付を行っていました。工場内では、複数のレーンが並べられ、間仕切り壁もなく、各作業が随時各レーンで実施されていました。

Aさんは、吹付作業と同一空間内で内装作業に従事する中で、吹付作業からリアルタイムに発生した石綿粉じんに間接ばく露していました。また、数時間あるいは数日前に実施された吹付作業から発生した石綿粉じんが工場内に滞留し、この石綿粉じんにもばく露していました。

しかし、旧アルナ工機時代の資料は、現在のアルナ車両には残されておらず、工場内での各作業の場所や、仕事の具体的な内容等を立証することは極めて困難を伴いました。

 

国賠訴訟の中で、国は、Aさんの作業内容の詳細な説明を求めるとともに、旧アルナ工機工場内での、吹付作業と窓枠サッシ取り付け作業の順序や、両作業が同時に行われていたのか、同時に行われていたとすれば一日何時間であったのかなど、50年以上も前の事実を詳細に明らかにするよう求釈明を繰り返してきました。

これに対し、当弁護団は、再度アルナ車両に問い合わせを行い、可能な範囲での主張立証を行うとともに、泉南最高裁判決に照らして早期の和解の途を探るべき国の責務に反し、不必要に詳細な求釈明を繰り返す国の対応に断固として抗議しました。

 

その結果、提訴から1年3ヶ月を経て、ようやく和解が成立しました。特別遺族年金の認定から国賠和解まで、ご遺族の粘り強い気持ちが実り、大変うれしい結果となりました。

 

当弁護団では車両製造現場での工場型アスベスト国賠訴訟を10件取組み、うち9件が和解解決済み、係属中の1件も和解見込みです。

今後とも車両製造現場でのアスベスト被害者の救済に全力を尽くしたいと思います。

 

(執筆担当:弁護士 藤原智絵)

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