ヤンマー尼崎工場のアスベスト被害について初めて国と和解成立
2021.10.062021年10月6日(水)、旧ヤンマーディーゼル神崎(尼崎)工場(現・ヤンマーホールディングス株式会社)で働き、石綿被害に遭った被害者の遺族が、国に賠償を求めた訴訟で、大阪地裁で和解しました。
被害者は大阪市内在住の女性で、昭和20年代後半に数か月と、1957~1960年の約3年間、ヤンマー尼崎工場の鋳物工場で働きました。被害者は、石綿を直接取り扱う作業に従事していたわけではありませんでした。しかし、工場内の他の作業である「取鍋」(とりべ。溶融した金属を流し込む鍋状の設備)の蓋(フタ)に石綿断熱シートが使用されており、その石綿断熱シートの取り付け時や除去時に発生、飛散した石綿粉じんに、間接的にばく露しました。
ヤンマー尼崎工場では、石綿の労災認定者(石綿救済法の特別遺族給付金も含む)が30名も発生しています。鋳物工場だけでなく、農作業機械のエンジン等にも断熱材として石綿が使用されていました。ヤンマー尼崎工場は、クボタ神崎工場の隣にありクボタの影に隠れていますが、ここでも甚大な石綿被害が発生していたのです。しかし、これまで同工場内の被害について国の責任が問われたことは、当弁護団が把握する限りではありませんでした。
被害者は、10代後半から20代前半にかけてたった数年間就労したにすぎませんでしたが、50年以上経った2006年5月に悪性胸膜中皮腫を発症、生前に労災申請をしましたが、認定される前の同年8月に亡くなりました。
2019年9月、遺族が厚生労働省からの通知を受けて、当弁護団に相談され、その後調査の上、国の責任が認められる可能性があると判断。2020年5月に遺族が原告となり、大阪地裁に提訴しました。
裁判では、国から、石綿ばく露実態を明らかにするよう求められました。60年以上も前のばく露でしたので追加調査には限界がありましたが、同工場の他の被害者の健康管理手帳の資料や労災資料について文書提出命令を申立て。国から任意に開示された資料を元に、ばく露実態や局所排気装置の設置により石綿粉じんばく露を防止することができたことを主張立証しました。これが奏功し、国が和解に応じ、慰謝料約1290万円、弁護士費用約129万円の合計約1419万円が支払われることになりました。
本訴訟の和解により、30人以上の甚大な被害を出しているヤンマー尼崎工場の被害者にも、石綿工場型の国との和解の可能性があること明確になりました。他の被害者にも工場型和解の要件に当てはまる方がおられると思います。この和解をきっかけに被害者の救済が広がることを期待します。
(執筆者:弁護士 谷真介)
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