肺がんの確定診断がないまま亡くなった被災者について、労災認定が下り、工場型アスベスト国賠で和解に至った事案
2025.05.02【事案の概要】
故Aさんは、旧浅野スレート株式会社(現・株式会社エーアンドエーマテリアル)に在職中の1965年3月から1977年3月までの約12年間にわたって石綿含有スレートの運搬作業に従事し、その後、2021年12月に肺がんで亡くなりました。肺がんと告知されてから、わずか1週間後のことでした。故Aさんの肺がんについては、胸部CT検査による画像診断結果はあったものの、当時のAさんの健康状態から生体検査が実施されず、肺がんの確定診断はなされていませんでした。
しかし、故Aさんの妻であるXさんからご相談を受け、当弁護団の協力医に故Aさんの胸部CT画像を読影いただいたところ、胸膜プラーク所見が認められるとの意見が得られたことから、Xさんのご依頼を受け、労災遺族補償請求をしました。その結果、故Aさんの肺がんについて、アスベストばく露による原発性肺がんに該当するものとして、労災認定が下りました。
労災認定が下りたことを受け、大阪地裁に工場型アスベスト国賠訴訟を提起したところ、初回の裁判期日でスムーズに国との間で和解が成立しました。
【本件のポイント】
肺がんの確定診断がなされず、生前の胸部CT画像しか医証が存在しない状況にもかかわらず、労災手続きで石綿ばく露による原発性肺がんだと認定されたのは、故Aさんの就労先であった旧浅野スレートで多くのアスベスト被害が発生していたことに加え、同社に在籍中に10年以上にもわたって故Aさんが石綿粉じんばく露作業に従事して来たことが事業主等の証明によって裏付けられたこによると思われます。
また、工場型アスベスト国賠訴訟において、故Aさんの石綿ばく露状況に関して詳しい説明を求められることもないまま、国との間で円滑に和解が成立したのも、故Aさんの就労先であった旧浅野スレートで多くのアスベスト被害が発生していたことが、大きな要因であったと思われます。故Aさんは、フォークリフトで石綿含有スレートを運搬する作業に従事していましたが、その際、切断作業場所である工場内への立ち入りがありました。
故Aさんの事案に限らず、石綿関連疾患であることの医証が乏しい事案であっても、被災者の方のアスベストばく露作業の状況や、就労先でのアスベスト被害の発生状況などの諸事情から、労災認定に至ることもあります。とりわけ、旧浅野スレートのように、アスベスト被害が多く発生している現場で就労されていた方の事案では、その傾向が顕著であるように思われます。
体調・体力面での事情等から確定診断に必要となる諸検査が十分になされなかった場合や、医療機関に診療録や検体などが残されていないような場合でも、アスベスト被害が多く発生している事業場で就労されていた方については、労災認定に至る可能性が十分にあります。ご自身で諦めず、まずは当弁護団までご相談ください。
(執筆担当:弁護士 西本哲也)
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