最新の解決事例

発電所の大型ボイラー、タービンの保温・断熱工事、現場監督の工場型アスベスト国賠和解成立

2025.01.15

■事案の概要

Aさんは、1967(昭和42)年から2000(平成12)年まで、保温・断熱工事の施工管理を行うB社の従業員(現場代理人)として、関西電力の火力発電所の現場で、ボイラーやタービンの点検やメンテナンス工事、その監督業務に従事。2020(令和2)年4月、肺がんと診断され、労災認定を受けました。

その後、Aさんは別の病気で亡くなりましたが、ご遺族からご依頼を受け、2022(令和4)年9月、石綿による肺がんを発症したことについて、国に慰謝料(損害賠償)を求める裁判(工場型アスベスト訴訟)を提起し、2024(令和6)年10月に和解が成立しました。

 

■保温・断熱工事の際の石綿粉じん作業

発電所の工場建屋内には、大型のボイラーやタービンが複数台設置され、それらをつなぐ蒸気配管が張り巡らされています。

ボイラーやタービン、蒸気配管などの設備は、数百度以上もの高温になるため、保温材を取り付ける必要がありました。

また、発電所設備のメンテナンス工事や修繕工事の際は、古い保温材を取外し、新たな保温材を取付けました。

 

Aさんの従事する現場では、用途に応じて、3種類の保温材(水練り保温材、石綿板、石綿クロス・石綿リボン)を使っていました。

「水練り保温材」は、粉状の原料と水をバケツなどに入れ、かくはん機で混ぜ合わせて作ります。袋から原料を取り出してバケツに入れる時や、かくはん機でかき混ぜる時に原料が水となじむまでの間は、もうもうとした粉じんが立ち込めました。

ボイラーの壁面には「石綿板」と呼ばれる四角い板状の保温材を貼り付けていました。石綿板は、ボイラーの大きさや形状に合わせてノコギリで切断しており、その際にも粉じんが発生しました。

バルブ(蒸気弁)、フランジ(配管の接合部)には、大小様々の「石綿布団」を作って巻き付けました。石綿布団は、ロール状の「石綿クロス」をハサミで適当な大きさに切断し、四角形の袋状に縫い合わせて作ります。蒸気配管には、「石綿リボン」を適当な長さに切って、包帯のようにくるくると巻き付けていました。石綿クロスや石綿リボンを切断する時にも粉じんが発生しました。

また、メンテナンス工事や修繕工事の際に、古い保温材を取外す作業の時にも粉じんが飛散しました。

Aさんは、保温・断熱工事を行う作業員に、作業内容や方法を示すため、自ら保温材の取付け・取外し作業を行い、また、工期が迫っている場合は、作業員を手伝って一緒に保温材の取付け・取外し作業を行いました。Aさんは、こうした作業の際に石綿粉じんを吸い込みました。

 

■換気作業台方式による局所排気装置

Aさんは、B社で働いていた当時、必要に応じて、タービンの近くで水練り保温材をかき混ぜたり、ボイラーの横で石綿リボンを切断するなど、実際にAさんが石綿粉じん作業を行っていた作業場所は、広い建屋内の様々な場所であったと思われます。

しかし、石綿粉じん作業を行う場所を固定し、局所排気装置を設置して、そこで石綿粉じん作業を行うことにすれば、Aさんの石綿粉じんばく露を相当程度防ぐことができました。

例えば、Aさんは石綿リボンをハサミで切断する作業から発生した粉じんにばく露しましたが、建屋内の一画に作業台を設置し、換気作業台方式による局所排気装置を設置して、粉じんの発生・飛散を抑制しながら作業台の上でのみ切断すれば、ばく露は相当程度防げたのです。

換気作業台方式による局所排気装置は、Aさんの石綿粉じん作業のように、実際には作業場所が固定しておらず、作業者が任意の場所で石綿ばく露作業を行っているケースを含め、大変応用範囲が広い方法です。

 

■国の不当な求釈明・主張と原告側の反論

提訴後、国からは、局所排気装置を設置することにより石綿粉じんばく露を相当程度防ぐことができたのかどうかを明らかにする必要があるとして、Aさんの具体的な作業内容や工程等、作業場所の広さや、ボイラー・タービンの大きさ、台数、配置状況、位置関係等、Aさんが保温・断熱工事の現場に滞在した時間や頻度、石綿粉じんばく露作業を行った頻度や作業時間等について、詳細な釈明が求められました。

 

これに対し、原告側では、スムーズかつ迅速に和解を成立させるため、Aさんの元同僚の協力を得て陳述書を作成したり、裁判所を通じてB社に当時の状況について調査嘱託を行ったりして、できる範囲で回答しました。

 

しかし、国の求釈明は、いたずらに細かいばかりか、原告側がいったん回答しても、さらに詳細な求釈明を繰り返すなど、必要性や理由が明らかでないものも散見されました。

 

もとより50年以上も前の事実について、国の求めるような詳細な事実関係を全て明らかにすることができるわけはありません。工場型アスベスト国賠訴訟は、原告側の証拠収集には一定の限界があることを前提に、あくまでも早期の和解を目指す司法救済制度として位置付けられたものです。

また、そもそも泉南アスベスト国賠訴訟の判決も、具体的にどの程度石綿粉じんばく露を防ぐことができたのかとか、どこにどう局所排気装置を設置することができたのか等の事実を認定したうえで国の責任を肯定したわけではありません。

しかも、国は、Aさんと同様の石綿粉じん作業について、換気作業台方式による和解事例(先例)が多数あるにもかかわらず、これまでの対応を変更して和解を拒否しようとして来たのです。

 

原告側は、泉南アスベスト国賠訴訟の根本に遡り、国の主張が誤っており、判決の内容・趣旨及びそれを受けた和解による解決事例の積み重ねを理解していないことを、豊富な証拠をもって丁寧に反論し、最終的に和解に至ることができました。

 

■大阪アスベスト弁護団にご相談ください

Aさんのケースでは、泉南アスベスト国賠訴訟の最高裁判決を勝ち取った私たち弁護団だからこそ、徹底的に反論し、和解できたと自負しています。

私たち弁護団は、20年にわたる豊富な経験と知識に基づき、どんな困難な事案でも最後まであきらめずに全力を尽くします。

アスベスト被害の補償・救済については、大阪アスベスト弁護団にご相談ください。

 

(執筆担当:弁護士 伊藤明子)

私たちにご相談下さい。
アスベスト被害に関するご相談は無料です。

アスベスト被害ホットライン

0120-966-329

(平日の10時~18時)

折り返し、
弁護士が直接ご連絡します。

  • 私たちは建設アスベスト訴訟を提起・追行し、最高裁で賠償・救済を勝ち取りました。
  • 詳しく見る >
  • 国から賠償金を受け取れる場合があります。
    アスベスト訴訟の和解手続は、最高裁判決を勝ち取った私たちにお任せ下さい。

私たちにご相談下さい。アスベスト被害に関するご相談は無料です。

ご相談はLINE・メール・お電話から
受け付けています。

  • メール

    無料相談
  • 電話

    アスベスト被害ホットライン 0120-966-329

    ( 平日の10時~18時 )

  • LINEお友達登録