小野寺利孝弁護士「5・17最高裁判決から今日に至るまでの経過と今後の闘い」について - 大阪アスベスト弁護団

小野寺利孝弁護士「5・17最高裁判決から今日に至るまでの経過と今後の闘い」について

2021.06.18

2021年6月16日(水)に開かれた「6・16建設アスベスト訴訟の全面解決をめざす全国総決起集会」における小野寺利孝弁護士(建設アスベスト訴訟全国弁護団会議共同代表)の報告全文を採録します。小野寺弁護士でなければ語れない歴史的な「闘い」の報告を、皆さま是非ご覧下さい。

*小野寺利孝弁護士[「5・17最高裁判決から今日に至るまでの経過と今後の闘い」について(2021年6月16日)PDF

 

6・16建設アスベスト訴訟の全面解決をめざす全国総決起集会

「5・17最高裁判決から今日に至るまでの経過と今後の闘い」について

 

                         2021年6月16日

            首都圏建設アスベスト東京訴訟弁護団団長 

建設アスベスト訴訟全国弁護団会議共同代表

弁護士 小野寺 利 孝

 皆さんご承知のように、5月17日、私たちは、最高裁で国と建材メーカーの法的責任を断罪する原告勝利判決を勝ち取りました。これを機に、国との13年に及ぶ長い裁判闘争にようやく決着を付けることが出来ました。その翌日、5月18日には、原告団・弁護団・全国連絡会と国との間で、「解決要求」【注を踏まえた「基本合意書」を締結し、去る6月9日には、「建設アスベスト被害給付金法」(略称)【注という大きな成果を勝ち取りました。

   【注「解決要求書」(2020年12月23日)

   【注】「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」

 この23日間で私たちが成し遂げた成果は、他に類例を見ない歴史的快挙と各方面から評価されています。

 私は、全国弁護団を代表し、この13年間、①法廷の内外で国の法的責任を追及する闘いを生命がけで闘って来た全国訴訟原告団の皆さんと、②一貫してこの原告団を支え、法廷内外で求められる持続的な諸活動を担い続けてきた、首都圏建設アスベスト統一本部に結集された建設労働組合をはじめとする全国の支援労働組合と市民団体の皆さんに対し、この歴史的勝利についてご報告したいと思います。

1.先ず、23日間という短期間でもたらした快挙を成し遂げるに至るには、この間の幾つかの節目があったことをご紹介したいと思います。

(1) 一つは、昨年12月14日東京第1陣訴訟で最高裁が、国の上告受理申立に対し不受理決定し、国の法的責任が確定したことです。加えて、この決定を踏まえて、国に対する全国の原告団・弁護団・「全国連絡会」が、全国建設アスベスト訴訟の「解決要求書」を提出しましたが、この2つの出来事がその後の動向を決定付けました。

(2) もう一つは、この2つの出来事を受けとめた政治の力です。先ずは、「自民党建設議連」と「公明党アスベスト対策本部」の先生方のご尽力で、昨年12月23日原告団・弁護団・全国連絡会と厚労大臣の面談が実現したことです。ここで田村厚労大臣が私たちの「解決要求」を受けとめ、原告代表に対し真摯な謝罪を行うとともに、原告団らと協議することを確約しました。加えて、大臣は、この協議を成功させるため、与党の適切な指導を要請されました。このことも、その後の展開を見ると大変重要な出来事であったと受けとめます。

 

2. 次の大きな節目は、今年2月18日「建設アスベスト与党PT」が結成されたことです。事実、与党PTは、今日まで実に精力的な活動を継続して行い、その過程で、私たちの想定を超える強力な政治的力を発揮されました。

 とりわけ、建設アスベスト被害者の過酷な苦しみとその遺族たちの痛みと悲しみを強く受けとめられた野田毅PT座長の強力なリーダーシップの下、PT活動を担われた与党の有力な諸先生の一致結束したこの間の活動は、率直に言って、目を見張るものがありました。

 与党PTは、原告団側からはもちろん、厚労省・国交省・経産省からのヒアリングを行って、原告団が求める「解決要求」の検討を重ねました。その結果、先ずは、国と全国訴訟原告団の早期和解の実現を目指す活動に着手されました。

 実は、最高裁の4事件で確定した各高裁の判決では、「国責任割合」と「損害賠償額」がばらけています。そのため、利害対立する当事者間の協議のみでは、和解を実現するには困難な状況にありました。その結果、与党PTは、「統一和解基準の設定」を鋭意検討し、最高裁判決の5月17日当日夕には、全国各高裁・地裁に係属する全ての訴訟を早期解決するために不可欠な統一和解基準を国と原告側の双方に提案したのです。

 その特徴の第1は、建設アスベスト訴訟判決で国の責任を3分の1とした多くの地裁・高裁判決を克服し、唯一国の責任を2分の1とした大阪高裁判決に準拠したことです。第2は、泉南アスベスト訴訟で国が工場労働者被害者に支払ってきたのと同様の損害賠償金を支払うよう国に提示したことにあります。

 同時に、与党PTは、未提訴アスベスト被害者に対し、裁判をすることなく和解金と同額の給付金を支給する制度を、議員立法で創設するという構想の検討に入りました。この構想は、与党PTにおいて「超党派国会議員立法案」を立案し、与野党全会派の賛同を得て今国会で成立させるというものです。事実、与党PTの法案は、6月2日衆議院厚労委員会に委員長提案として提出されたことから始まり、衆参両院で採決され、6月9日に成立するに至りました。

 これまでに先例がないと指摘される超短期での立法でした。この立法によって、過去・現在そして将来30年に及ぶとされる全ての未提訴被害者、その数3万人を超えると想定される被害者の方々に対し、原告さんたちのような裁判をすることなく、行政認定で訴訟上の和解基準と同額の給付金を支給する制度が創設され、来年4月施行が予定されています。

 この法律は、国のみ拠出の基金による国責任部分のみの給付金制度です。与党PTは、これにとどまらず、「建材メーカーの対応」についても今後与党PTで検討するとして、私たちが求める建材メーカーの拠出による「基金創設」の実現へ向けても、道筋をつけています。さらには建設業に従事する者の更なる被害防止対策の徹底等についても、引き続き本PTで検討を行うことを確約しました。

 原告団・弁護団・全国連絡会は、この与党提言を5月17日、即時これを高く評価して受け入れることを表明するとともに、国がこの提言を正面から受けとめ、同意するよう求めました。その結果は、皆さんメディアの報道でご承知のことと思います。

 一つは、与党PT提言を受けとめた菅総理が、5月18日午前11時、最高裁判決4事件の原告団を代表する宮島団長他4名の代表と、全国弁護団代表と全国連絡会代表各1名を官邸に招き、国の責任を断罪した最高裁判決を真摯に受けとめ、深々と頭を下げて原告の皆さんに謝罪しました。さらには、この席に立ち会った与党PTの代表に対しても、この提言をしっかり受けとめる旨言明し、建設アスベスト訴訟の早期解決を政府を代表して原告団らに表明しました。

 この場では、原告団を代表して大坂春子さんが多くの報道記者たちが見守る中で、夫と息子の生命をアスベストで奪われた悲しみ・苦しみを切々と訴え、早期解決を強く求めました。

 その後、全国弁護団を代表して、私は、菅総理に対し、原告団の解決要求を踏まえ、次の2点を強く要望しました。

 第1は、今後、建材メーカーはもとより、建設業者を強力に指導し、改修・解体工事から廃棄に至るまで、建設アスベスト被害の予防・根絶に万全を尽くすことであり、

 第2は、被害補償の在り方について、国のみの基金でなく、国と建材メーカーらとの共同責任において、十全を期すにふさわしい新たな政策の検討をすることです。

 この総理面談に立ち会って印象深かったのは、一つは、自分と同郷の人と言うこともあってか、大坂さんを直視してその訴えを真剣に聞き入っている姿勢でした。もう一つは、面談終了後、菅総理が、宮島団長はじめ原告代表の席に歩み寄り、一人ひとりに深々と頭を下げ、お詫びと見舞いの言葉をかける姿でした。

 この日の夕刻には、多くの記者たちの前で、田村厚労大臣が、昨年12月23日に続いて改めて全国原告団を代表する宮島団長に対し、「国の法的責任を真摯に受けとめての謝罪」を改めて表明しました。そのうえで、国を代表して、建設アスベスト原告団代表、同全国弁護団代表、同全国連絡会代表との間で、「基本合意書」を成立させました。その内容は、先ず、「謝罪」、次いで「係属中の訴訟の早期和解」と「未提訴の被害者に対する補償」、さらには、「予防対策、医療体制確保」と共に、「被害者に対する補償に関する事項」について全国連絡会と継続的に協議を行うとする「基本合意書」に各自署名し、与党PTの野田座長、江田座長代理の立会人としての署名を得て、成立させました。

 以上が、私たちの解決目標の中で国に関する要求の基本的部分について、解決出来たことに関するご報告です。

 この間、原告の方々から、「13年はあまりにも長すぎた。多くの仲間が、志半ばで逝ってしまった。」という長すぎた裁判闘争についての厳しい指摘を幾度も受け、胸を痛めました。同時に、「この立法による政治解決を実現して、本当に嬉しい。これで、ようやく亡き夫や子に「勝ったよ」と報告出来る」という大坂春子さんの涙ながらの受けとめや、「志半ばで逝った原告の仲間の霊前に、「国に勝ったよ」「裁判なしに救済する制度作ったよ」と報告出来る」と喜びを表した渡辺信俊さんらの声も聴き、胸を熱くもしました。

 

3.次いで、今後私たちに求められる課題について報告します。

 私たちが獲得した「勝利」は、「国との関係での基本的解決」ですが、国との関連で今後取り組むべき幾つかの課題が残されています。今後は、私たちが、国との基本合意で確約した「国と「全国連絡会」との定期協議」の場」を活かし、第1は、現在係争中の全ての訴訟で国と和解による早期の司法解決を目指すことになります。その中でも、最高裁判決で救済を否定された屋外工原告、期間外原告の労働実態を踏まえた権利救済を追求します。第2は、立法を踏まえた未提訴被害者全員の迅速な権利救済に取り組むとともに、今回の解決の外の置かれた屋外工と期間外工の救済についても、司法の限界を超えて、政治の力による救済を求め、「建設アスベスト被害給付金法」の法改正を追求します。第3に、アスベスト被害の予防と医療支援の拡充に取り組むことになります。

 同時に、未解決のままに残された最大の課題である「建材メーカーの法的責任を踏まえた謝罪と賠償請求の闘い」を、全国弁護団の力をより一層拡充・強化して、「建設アスベスト訴訟全国連絡会」とともに全国的闘いを強力に進めます。先ずは、5・17最高裁判決を踏まえた司法解決へ向けて、法廷内外の闘いに全力を挙げて闘います。

 加えて、13年の闘いで勝ち取った最高裁判決で明らかとなった建材メーカーの「法的責任」を踏まえることは当然として、「働く者の生命と健康を守り、環境汚染を防止する」という現代社会で全ての企業に求められる「社会的責任」をも追及する闘いを強めるならば、必ずや建材メーカーらをして、国と共に「建設アスベスト被害補償基金」制度の創設を決断させることが出来ると確信します。

 

 最後に、この13年間の闘いを改めて振り返ってみると、長期かつ困難な闘いではありましたが、全国の原告団・弁護団・支援の強い団結と「不屈の闘志」こそが、この長期困難な闘いに打ち勝ち、今日、国との関係で歴史的な成果を挙げることが出来たのだと思います。

 今後の闘いは、建材メーカーの前近代的体質に根ざした強い抵抗が想定されますが、今日到達した闘いの成果を踏まえて闘うだけに、出来るだけ短期間に裁判闘争で損害賠償を獲得すると共に、建材メーカーが参加する「建設アスベスト被害補償基金」の構築を目指す立法闘争に、超党派の国会議員の諸先生の引き続くご支援と世論の支持を一層拡大する努力を尽くし、引き続き全力で取り組むことを決意表明し、私の報告とします。

 

 皆さん、今日を期して、最終解決を目指し、より一層「原」「弁」「支」の団結を強め、最期まで闘い抜きましょう!

                            以 上

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